オリジナルレトロ 第二章:波紋
第一章で、若い女性、美咲から預かった江戸後期に発行された珍しい古銭。その鑑定を終えた橋本は、静かな夜に一人、その古銭を手に取っていた。 表面には、かすかに波模様が刻まれ、裏面には、通常の小判とは異なる、奇妙な文字が記されていた。
その文字を解読しようと試みる橋本。 しかし、通常の古銭の文献には載っておらず、専門家にも見慣れない文字だった。 彼は、いわき市図書館へと向かい、古い文献を調べ始める。 そこで彼は、驚くべき事実に出くわす。 その文字は、いわき地方の古い方言で書かれたもので、その意味は「海神(わたつみ)」だったのだ。
「海神…」 橋本は、その言葉に、何かを感じ取った。 彼は、美咲から聞いた、古銭の由来を思い出す。 美咲の祖父母は、代々、このいわき地方で漁師をしていたという。 そして、その古銭は、代々、家宝として大切に受け継がれてきたものだった。
その夜、橋本は、美咲から預かった木箱を再び開けた。 古銭と一緒に、一枚の古い写真があった。 それは、美咲の祖父母が、若い頃に撮影された写真だった。 二人は、満面の笑みを浮かべ、海を背景に写っていた。 しかし、その写真には、何かがおかしい。 写真の中に、かすかに、人影のようなものが写っていたのだ。
翌日、橋本は、美咲に連絡を取り、写真の件を尋ねる。 美咲は、その写真について、何も知らなかった。 しかし、彼女は、祖父母が、海で不思議な出来事を経験したという話を、子供の頃に聞いたことを思い出したという。 それは、嵐の夜に、海の中から、不思議な光が差し込んだという話だった。
橋本は、美咲の話を聞きながら、古銭に刻まれた「海神」の文字、そして、写真に写っていた人影を結びつける。 彼は、この古銭が、いわき地方に伝わる、ある伝説と関係しているのではないかと推測する。 それは、海神が、人々に豊漁をもたらす一方で、時に災いをもたらすという、古い伝説だった。
橋本は、この古銭の謎を解き明かすため、そして、美咲の祖父母の過去を明らかにするため、新たな調査を始める。 静かな住宅街に、静かに、しかし確実に、波紋が広がり始める。
この章のポイント:
– 謎の文字の解読: 古銭に刻まれた文字が、いわき地方の方言であることが判明する。
– 古い写真の発見: 写真に写る人影が、物語の重要な手がかりとなる。
– 伝説の登場: いわき地方に伝わる海神伝説が、物語に深みを与える。
– 新たな展開への布石: 次の章への展開を示唆する、重要な出来事が発生する。
この第二章では、第一章で提示された謎が、徐々に解き明かされていきます。 同時に、新たな謎や伏線が提示され、物語はさらに複雑で興味深いものになっていきます。 静かな住宅街を舞台に、古銭の謎を追う橋本と美咲の物語は、これから新たな展開を迎えます。